TQQQがITバブル、リーマンショックに遭遇するとどうなるのか?シミュレーション(米株)

レバレッジ型ETFは普段は儲けが多くて魅力的ですが、一旦大暴落すると価値が殆どなくなってしまい、元に戻るのに非常に長い期間を要してしまう点が欠点です。とはいえ実はコロナショック程度なら大したことはなく、ノーレバレッジ型と比べて1.4~2.4倍程度の時間を要したものの既に元の価格に戻しております(21.4.18現在、ETFによる)。

レバレッジ型ETFのリスク。大暴落したらサヨウナラ(米株)

 

ではさらに大きな暴落であったリーマンショックやITバブルではどの位下落し、そしてどの位の期間で復活するのでしょうか?

当時はTQQQ(ナスダック100ETFブル3倍)が無かったため、ノーレバレッジ型のQQQの値動きを元にシミュレーションをしてみました。

ref) https://kagamiru.com/soxl-in-depression/

 

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 過去の大暴落のおさらい 

まずは比較的長い期間のデータが入手可能だったS&P500ETF(SPY)で過去の暴落を再確認してみます。

 

SPYの値動き、1994年以降

 

こうしてみると2020年のコロナショックは特異な暴落であり、下落が凄まじいスピードであった反面、戻しも異様に早かったことがわかります。

対するITバブルやリーマンショックは下落幅が大きいだけではなく、ピークから底に至るまでに1年程度も要し、底から戻すのにも2~3年と長期間低迷していたことがわかります。

こんな時にレバレッジ型ETFを持っていたらヤバそうなことはこれを見るだけでも何となく予想が付きます・・。

 

 疑似TQQQで味わうITバブル、リーマンショック 

TQQQはQQQの日々の値動き比率の3倍変動する事を目指したETFですが、実際に日々の値動きを見ていると3倍も動いていないことが多いように思えました。そこで実際にはどの程度の変動率になっているのかをTQQQのデータが入手可能だった2010年以降でQQQと比較してみました。

 

TQQQのQQQに対する実際の変動率

 

前提条件として終値で比較し、QQQの変動が余りに小さいと誤差が大きくなることが予想されることから0.1%以上の変動があった場合のみで比較してみました。

結果、案外3倍にかなり近い値で変動しておりました(汗)ただ割高な信託報酬が日々引かれることでマイナス幅の方が大きくなることを予想していたのですが、意外なことにプラス幅のほうが大きい事がわかりました(2.97 vs 2.98倍)。

恐らく大きくマイナスになった際の処理方法(ロスカット?)など設計上の要因があるのではないかとは思いますが、先物を投資対象にしている位の事しか知らないので明確な理由はわかりません (ΦωΦ) オシエテ・・

この数値を用い、QQQのデータが得られた1999年以降の疑似TQQQの値動きをシミュレーションしてみました。まずは有名なリーマンショックから。

 

 

リーマンショック時の疑似TQQQの値動き(直前のピークを1として表示)

 

リーマンショック時はQQQが50%程下落し、疑似TQQQは90%以上の下落になっております。その後2年程度でQQQは元の水準を回復し、疑似TQQQも4.5年程度と2倍強の期間で回復していることがわかります。

さらにその後はQQQを遥かに上回り、12年後の現在ではQQQの7.13倍(47.01÷6.589)もの水準に達しております。これなら長期投資を前提とすれば疑似TQQQの方がお得な様な気すらしてしまいます。

ちなみにこのシミュレーションの精度を調べるためにほぼ同じ水準になった2013年10月以降のQQQとリアルTQQQの値動きを見てみます。

 

 

QQQとリアルTQQQの値動き(2013年10月~)

 

QQQが+504%なのに対し、リアルTQQQは+6,326%に達し10.63倍(6426÷604)と疑似TQQQの7.13倍とはややズレが見られます。これは日々の値動きの誤差が要因だと考えられますが、7.5年と長期間の誤差の蓄積結果であることを踏まえるとこの程度ならまあ辛うじて許容範囲といえるのではないでしょうか。

では話を元に戻し、ITバブル時の疑似TQQQはどうでしょうか?

 

 

ITバブル時の疑似TQQQの値動き(1999年の価格を1として表示)

 

1999年から持っていたとすると、ITバブルの底ではQQQが60%の下落に対し、疑似TQQQは99%以上の下落・・・。その後元の水準を回復しないままリーマンショックを迎え、その底ではQQQが50%の下落に対し、疑似TQQQは再度99%以上の下落と大苦戦を強いられております。

正に蒸発・・。

元の水準に回復してくるまでQQQですら10年を要し、疑似TQQQに至ってはつい最近、実に20年もの歳月を要していることがわかります。

あれ、とは言っても結局2倍程度の期間で戻すんですね。

しかもリーマンショックは直前のピーク値から見ましたが、ITバブルはデータが得られた1999年から見ておりますので、ピークの時に買ったとするとQQQですらここ数年でやっと元の水準、疑似TQQQに至っては未だに32%の水準です。ピーク時に買ってしまったら不運としか言いようがないですが、これはなかなか厳しい結果です。

 

とは言え、当時のITバブルは成長期待が余りに先行し、現実が伴わなかった為に大きく弾けただけではないかと言う気もします。一方で現代のハイテク業界は生活スタイルに大きな影響を及ぼし、実際に莫大な利益も生んでおります。

 

ref) https://twitter.com/company_hack

 

個別銘柄に関しては過度な期待が修正される場面も想定されるものの(下図)、ハイテク業界全体が期待外れに終わる、即ちGAFAMが総崩れしてITバブルが再来する未来を想定するのは個人的にはいささか心配性が過ぎる様にも思えます。(p.s. 栄枯盛衰)

 

2021年の予想収益に基づいたPERが高い米株トップ100(21.1.22)

ref) https://www.bloomberg.com/news/articles/2021-01-22/these-are-the-most-expensive-stocks-in-a-market-full-of-optimists, https://www.gsam.com/content/dam/gsam/pdfs/international/ja/fund-literature/reports/2020/flashrept_20201221.pdf?sa=n&rd=n

 

Hi PERの代表格でQQQの組入上位でもあるTSLAの推移。2020年~。PER=1175…。(直近12ヶ月)。直近ではやや調整も持ちこたえている様子。日本向けに小型車も早く出して欲しい。なるたけ安く、もちろん完全自動運転で!(*過度な期待)

 

 終わりに 

以前コロナショックで検証をした際にレバレッジ型はノーレバレッジ型と比べて元の水準に戻るまで2倍程度の時間を要したのですが、今回検証した更に大きな下落でも似たような遅延で済むことがわかりました。

疑似TQQQはリーマンショックでは4.5年で復活したのに対し、ITバブルは20年と致命的なほど回復に時間がかかりましたが、これはQQQも10年と重症的なほど時間がかかった事を反映しているだけでした。

 

要するに問題は暴落時にTQQQを持っていることそれ自体ではなく、今後ハイテク業界がITバブルのような崩壊をする事を想定するかどうかであると言えそうです。

仮にハイテクバブルが弾けるものと想定するのであればTQQQは勿論、ノーレバレッジ型のQQQですら買うべきではないし、GAFAM依存度の高いS&P500ですら避けるべきかも知れません(下図)。逆にITバブルのような事は想定する必要はなく、せいぜいコロナショックやリーマンショック位だろうと想定するのであればTQQQを握りしめて気絶していても特に問題がないように思えました。

 

S&P500からGAFAMを除いたS&P495はTOPIXと同レベル

ref) https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2009/11/news032.html

 

むしろ暴落より怖いのは繰上償還の方なのかもしれませんね・・(不穏)

 

コロナショック時の繰上償還の例

・アムンディ・フロア・アロケーション

・アムンディ・ダブルウォッチ

・豪ドルMMF、NZドルMMF

ref) https://www.morningstar.co.jp/market_spn/2020/0420/fund_00755.html, https://info.monex.co.jp/news/2020/20201207_05.html

 

なお、国内証券会社ではTQQQやPDBC(コモディティETF)を買えないのでTochiはIB証券(Interactive Brokers Securities、SBIや楽天の米株取次先)を使っております。色々と手間が掛かりますが売買手数料が1$(~200株)、為替手数料が2$と非常に安いのも魅力です。

 

 

=21.4.21追記=

シミュレーションの誤差が気になったのでもう少し丁寧な方法でやってみました。

 

実データのある2010年以降のQQQとTQQQの変動倍率のプロットと近似式

 

最初のものを疑似TQQQ1、この近似式で求めたものを疑似TQQQ2として比べてみます。

 

 

実データのある2010年以降のQQQとTQQQ、及び疑似TQQQ1、2の価格推移

最終日(21.4.16)の値(初日=1)

QQQ:7.83

TQQQ:128.51

疑似TQQQ1:140.95(TQQQ+9.7%)

疑似TQQQ2:129.99(TQQQ+1.1%)

 

 

1999年以降のQQQ及び疑似TQQQ1、2の価格推移

最終日(21.4.16)の値(初日=1)

QQQ:6.70

疑似TQQQ1:2.68

疑似TQQQ2:2.32(疑似TQQQ1-14%)

 

やや疑似TQQQ2の方が正確そうですが、とは言えどちらの方法でも大差のない結果となりましたとさ・・(TдT)

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